
飲食店の最大の敵は「人手不足」ではなく“質の低下”
飲食店は今、過去にないほどの採用難に直面しています。
- アルバイト応募が来ない
- 外国人スタッフ頼み
- 研修に時間をかけられない
- 未経験者でも採用するしかない
- 店長が育成より現場に追われる
こうした状況の中で、本来守るべき Q(品質)・S(サービス)・C(クレンリネス) が維持できなくなりつつあります。
特にチェーン店では、
“アルバイトだけで店を回す” が当たり前になり、
個々のスキルによって オペレーションの完成度がバラバラ。
その結果、
- 一度の料理不良で客が離れる
- たった一回の対応ミスでSNSに書かれる
- 店の評価が落ちて人が来なくなる
これは珍しいことではなく、むしろ全国で起きている現実です。
飲食店経営で最も怖いのは——
「一度来たお客様が、次に来ないこと」。
それは大きなクレームで起きるのではなく、
小さな“残念”が積み重なったとき、静かに起こります。
QSCの崩壊は「たった一回」で十分に起きる
QSCの中でも、特に“取り返しがつかない”のが Q=Quality(料理の品質)。
サービスが多少悪くても、清潔さに少し問題があっても、
料理が美味しければリピートはあり得ます。
しかし料理の品質が悪いと、それだけで致命傷。
逆に言えば、
- Cはやるかやらないか(システム化すれば防げる)
- Sは通常レベルを維持すればなんとか(伸ばせればプラス)
- Qは落とせない(落とした瞬間に客が離れる)
という構造になっています。
飲食店の失敗の多くは “Qのバラつき” が原因。
店長が見ている時は綺麗に仕上がるが、
アルバイトだけの日は料理が崩壊している。
こんな店はいくらでもあります。
そして、客はこう思うのです。
「今日は当たりが悪かった」ではなく
「この店はいつもこうなんだろう」 と。
だから、二度と来ない。
実際に「もう来ない」と感じた料理・サービスの実例5選(本当に起きた話)
客の声・現場の実態から、“致命的だったケース” を紹介します。
① そば屋:茹でが甘く、芯が残っている(しかも店員は気づいていない)
そばは時間との勝負。
茹で時間が10秒ズレただけで品質が変わる繊細な料理。
しかし、ある有名チェーン店での話。
おそらく「麺の硬さ」を理解していないのか、認識が甘い。
提供されたそばは、
- ゴワゴワ
- 芯が残っている
- ぬめりも取れていない
一口で「あ、もう来ないな」と決まった。
そば屋で“そばが不味い”は致命傷。
蕎麦好きはこだわりがある人が多いので、気に入れば毎日のように来てくれる常連にもなる。
② 中華料理店:揚げ物がべちゃべちゃで油がきれていない
唐揚げ、春巻き、エビフライなどの揚げ物。
本来カラッとしているべき料理が、
皿に置いただけで油がじわっと染み出す状態。
原因は明確。
- 油の温度管理ができていない
- 揚げ終わった後の油切りをしていない
- 同じ油を使いすぎている
揚げ物の不良は、客側は敏感に気付く。
「ここは衛生管理も雑なのか?」
という不安に直結し、再来店はない。
③ ラーメン店:スープの温度がぬるい(繁忙時に起こりやすい)
ラーメンは温度が命。
60℃台に下がったスープは、どれだけ味が良くても台無し。
あるチェーン店で提供されたラーメンは
- 麺はのびかけ
- スープはぬるい
- 盛り付けも雑
明らかに“作り置き”のような状態。
多くの客は言わないが、心の中ではこう思う。
「この店は管理ができていない」
ラーメンがぬるい店に、リピート客は絶対につかない。
ラーメン好きは食べ歩いている人が多いので、評価も厳しめ。良ければ直ぐにSNSに投稿してくれたりもする。
④ 洋食店:ハンバーグの中が半生(新人スタッフの焼きミス)
ハンバーグは中心温度を理解していないと簡単に失敗する。
実際にあった例は、
- 外側だけ焼けている
- 中はほぼ生
- ナイフを入れると赤い汁が溢れる
「すみませんが焼き直しますか?」
と店員は話すが、客はもう食欲が失せている。
衛生リスクも高く、印象は最悪。
⑤ パスタ店:塩味が強すぎて食べられない(レシピ理解の不足)
パスタは手軽だが、塩加減は難しい。
特に新人スタッフは、
- 茹で加減
- 茹で汁の量
- 塩味の調整
- 乳化のタイミング
これらを再現できない。
結果、
塩辛すぎて食べられないパスタが出てきた。
客は店を出た瞬間にこう思った。
“チェーン店だから味が均一だと思っていたのに、今日は最悪だった”
これも再来店ゼロの典型例。
⑥ 盛り付けが雑:料理が美味しくても“安っぽく”見える
- 皿のふちにソースが飛び散っている
- 野菜の置き方がバラバラ
- ご飯がこぼれている
- カツが斜めに倒れている
見た瞬間に客は
「丁寧に作っていない」
と判断する。
SNSで写真も取られやすい時代だからこそ、
盛り付けミスは致命的。
なぜこうした“料理の崩壊”が起こるのか?
●原因①:採用難で未経験者を仕方なく採用している
本当に欲しいレベルの人材を採用できない。
これは全国共通の悩み。
●原因②:教育の時間が取れない
店長も人不足で現場に入りっぱなし。
「教えたいけれど教えられない」状態が続く。
●原因③:オペレーションが属人化している
- Aさんが作ると美味しい
- Bさんが作ると不味い
という店は危険。
●原因④:レシピが“感覚”で伝わっている
昔気質の店ほど、
「このくらいでOK」
「見ればわかる」
で伝えてしまう。
結果、料理がバラつく。
●原因⑤:チェック機能がない
上がる前の料理を誰も確認しない店は、ミスが店頭に出る。
飲食店が今すぐ取り組むべき“Qを守る仕組み”
飲食店のリピート率を上げるには、
CやSよりも まずQの安定化 が最優先。
① 調理の“完成基準”を数値で定義する
- 茹で時間
- 温度
- 重さ
- 分量
- 盛り付け位置
“感覚”ではなく数値化する。
② 完成した料理のチェック担当を決める
アルバイトだけで回す日は特に重要。
アルバイトでも優秀な人材はいます。どのように権限移譲を行い、モチベーションを与えられるかは管理者の能力。
③ 写真付きの「完成例」を厨房に貼る
どれだけ教育が大変でも、視覚化すれば9割伝わる。
④ 「重要工程だけは絶対に責任者がやる」体制を作る
- スープ管理
- 揚げ油の温度
- 茹で時間の管理
ここを任せると崩壊する店は多い。
⑤ 料理ミスを“当たり前に共有できる文化”をつくる
「怒られるから黙っておこう」
これが最悪のサイクル。
ミスの報告=改善点の共有
になる文化は強い。
クレームになると怒られるは良くありません。
クレームは確かに面倒ですが、それ以上に怖いのはサイレントクレーム。直接抗議はしないが、もう二度と来店してくれない。
まとめ|これからは「仕組作りできる店」が生き残る
飲食店の未来は、
- 人手不足
- Qのバラつき
- 接客レベルの低下
- 教育する時間のなさ
こうした問題がもっと大きくなるでしょう。
そんな中で
生き残るにはQを守る仕組みを作れた店です。
料理が安定して美味しい店は、
どれだけ競合が多くても、大きな強みです。
そしてQが守られた店は、
- S(サービス)が映える
- C(清潔さ)が生きる
- スタッフも働きやすくなる
結果的にお客様が離れなくなる。
飲食店は厳しい時代になりましたが、
“料理の質”を常に維持できる店はいつの時代も抜き出るものです。
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