
はじめに|「何を考えているかわからない」20代たち
「言われたことしかしない」「上昇志向がない」「指摘するとすぐ辞める」
40代・50代の指導者が若手に抱く悩みの代表例です。
一方で、20代の側からはこんな声も聞こえます。
「頑張っても評価されない」
「上の世代が古い価値観を押しつけてくる」
「仕事より、人生を充実させたい」
つまり、“やる気がない”のではなく、「何を大切にするか」が変わっただけなのです。
今の20代は“意欲がない”のではなく“目的が違う”
40代以降の世代は「努力すれば報われる」「会社で出世する=成功」と信じていました。
しかし、今の20代は社会構造の変化の中で育ちました。
- 終身雇用の崩壊
- SNSで個人が発信・稼げる時代
- ブラック企業問題・メンタル不調の可視化
- 働き方改革と副業の一般化
このような環境で育った彼らは、「会社中心の人生」よりも「自分中心の人生」を重視します。
そのため、上司が「会社のために頑張れ」と言っても、心に響かないのです。
では、彼らが本当に求めているものは何でしょうか?
20代が仕事に求める5つの本音
① 心の安定とストレスの少ない職場環境
まず最も強いニーズは「心の安定」です。
彼らは“心をすり減らしてまで働くこと”を望みません。
「前職でメンタルを壊した友人が多い」
「上司の感情に振り回されるのは疲れる」
こうした背景から、
「安心して働ける人間関係」が最優先になります。
💬20代社員の声:
「きつい仕事でも、上司が穏やかで話を聞いてくれたら続けられると思う」
→ 上司に求められているのは“怖さ”ではなく、“安定感”です。
② プライベートの充実とワークライフバランス
40代以上の世代は「仕事が人生の中心」でした。
しかし20代にとって仕事は“人生の一部”。
「休みを取る=悪」ではなく、「休みを取らない=非効率」
という考え方が主流です。
休日を趣味や推し活、旅行、自己投資に使うことが“人生の満足度”を高める手段。
そのため、上司が「残業してでもやり切れ」と言うと、価値観の衝突が起こります。
💬20代社員の声:
「仕事が忙しくても、趣味の時間があると気持ちがリセットできる」
→ 指導者は“結果で評価する姿勢”に切り替えることが必要です。
③ 成長実感と「認められる」こと
「褒めて伸びる世代」とよく言われますが、
実際は「自分の成長を実感したい」欲求が強いのです。
「頑張っても反応がないと、何のためにやってるのかわからなくなる」
上司の立場からすると「甘え」と見えるかもしれません。
しかし、これは“承認”というより「存在を見てほしい」というサイン。
💬現場の事例:
新人が小さな成功を報告したとき、「それはすごいな」「助かったよ」と一言添えるだけで、翌日から行動が変わる。
→ 若手が動かないのは「怠け」ではなく、「手応えを感じていない」だけのことが多いです。
④ 人間関係の透明性と安心感
20代の多くはSNS世代。
「裏表のない人間関係」「言葉と行動が一致している上司」を重視します。
「上ではいい顔をして、裏で悪口を言う人を見ると一気に信頼を失う」
「指導は厳しくても、言ってることが一貫していれば納得できる」
つまり、求めているのは“優しい人”ではなく“誠実な人”。
💬20代社員の声:
「注意されても、ちゃんと理由を説明してくれる人なら素直に受け入れられる」
→ コミュニケーションのポイントは「納得感のある指導」にあります。
⑤ 会社より「自分」を軸にしたキャリア形成
最後に最も大きな変化。
今の20代は、「会社に人生を預ける」という発想がほぼありません。
「転職してもキャリアになる仕事がいい」
「資格やスキルが身につく仕事を選びたい」
つまり、“会社”ではなく“自分の市場価値”を見ています。
そのため、上司の「うちの会社で頑張れ」というメッセージは響きにくい。
💬20代社員の声:
「この会社で学べることが多いなら、しばらく続けたい」
→ “この会社で何を得られるか”が彼らのモチベーション源になっています。
40代以降の指導者が陥りやすい誤解
① 「若い子は根性がない」
→ 根性ではなく“方向性”を探している最中です。
② 「厳しくしないと成長しない」
→ 厳しさより“筋の通った指導”が信頼を生みます。
③ 「昔はもっと頑張った」
→ その“昔”とは社会構造も価値観も違います。比較は無意味です。
④ 「給料のために働いているはず」
→ お金は大事ですが、“意味のある仕事”を求めています。
⑤ 「ゆとり世代は扱いづらい」
→ “扱う”ではなく“理解する”。言葉の使い方を変えるだけで関係性も変わります。
世代を超えて信頼を築くための3つの姿勢
① 「質問」で相手を理解する
「最近どう?」ではなく、「どんな時にやりがいを感じる?」と聞く。
質問の質を変えることで、若手の価値観が見えてきます。
② 「背景」を伝えて指導する
「なぜこのやり方が必要なのか」をセットで伝える。
理由を知れば、20代は納得しやすく行動も早い。
③ 「完璧を求めず、変化を楽しむ」
指導者自身が“学び続ける姿勢”を見せることが最大の教育。
「今の子は難しい」と嘆くより、「今の時代を知ろう」と向き合う姿が信頼を生みます。
まとめ|“理解しようとする姿勢”が最大の教育力
20代が求めているのは「優しい上司」ではなく、
“自分を理解しようとする大人”です。
価値観は違って当たり前。
ただ、その違いを“否定”ではなく“共有”できる職場こそ、
これからの時代に生き残ります。
40代以降のあなたができる最も大きな改革は、
「若者を変えること」ではなく、
「若者を理解しようとすること」です。
それが、世代を超えて信頼を築く唯一の道です。
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