「なぜ客が店内掃除しているの?」――飲食業30年の友人が、ある店で体験した事と感じた違和感

先日、飲食業を長く経験している友人から、少し驚く話を聞きました。

話を聞き終わった私は、しばらく考えてしまいました。

「今の飲食店って、これが普通なのだろうか?」

友人が憤りを感じたのは、料理がまずかったからでもありません。

店員の態度が少し悪かった、という程度の話でもありません。

もっと単純で、もっと根本的な出来事でした。


目次

「すみません、これで掃除してください」

友人は家族と一緒に、ある回転寿司チェーン店へ食事に行ったそうです。

店内はかなり混雑していました。

テーブルの上には、食べ終わった皿がいくつも残っていたそうです。

そんな中、ちょっとしたアクシデントが起きました。

注文用の端末が、テーブルの上に置かれていた茶碗蒸しに当たってしまったのです。

茶碗蒸しは床に落下。

容器は割れ、中身も床に散乱しました。

もちろん、友人はすぐに謝りました。

「すみません。落としてしまいました」

真後ろでバッシング(後片付け)作業をしていた店員に伝えました。

普通なら、店員が片付けてくれるものです。

ところが――

店員から渡されたのは、タウパーと布巾でした。

「これで掃除してください」


友人は「えっ?」となったそうです

友人は自分たちが落としたものだから、ある程度片付けること自体は当然だと思ったそうです。

ただ、床には割れた容器の破片があります。

手を切る可能性もあります。

そして何より、店員は目の前にいる。

それなのに、家族3人で床を素手で掃除することになった。

店員は、全く手を出さないで傍観。

ダスターが少ないので、

「これでは足りません」

と伝えると、もう一箱持ってきて渡されたそうです。

しかし、それでも掃除をするのは客のみで店員は見ているだけ。

友人は、そこで思ったそうです。

「これって、本当に客にやらせることなの?」


確かに忙しい時間帯にこんな事があると「イラっ」とする気持ちはわかります。

私も数十年飲食業に従事していたので、このような出来事は珍しくありません。

ただ、お客さんに掃除をするように言ったことも考えた事もありません。

悪意があり落したならまだしも、謝罪もしているのですから店側で対処するものではないでしょうか。

ここから、話がおかしくなっていった

友人は店員に聞きました。

「なぜ、私たちだけで掃除させるのですか?」

しかし、明確な答えは返ってこない。

そこで責任者を呼んでもらうことにしました。

やってきたのは、アルバイトリーダー。

型通りの謝罪の言葉でなぜ客だけに掃除させるのか説明はなく、友人は納得できなかった。

「確かに、落としたのはこちらです。それについては謝ります。でも、割れた容器を客に素手で掃除させるものなんですか?手を切る可能性もあるし、衛生的に問題ではないですか?」

すると、更に型通りの「済みませんでした」のみ。

話が進まない。

友人は店長を呼んでもらうことにしました。

ところが、その日は店長がいない。

そこで、

「では、エリアマネージャーやSVなど、上の方に連絡してください」

と伝えたそうです。


店長と電話で話すことになった

なかなか戻ってこないので、スタッフいる所へ行ったそうです。

「店長が電話に出ています」

という話になった。

そこで友人は電話を代わってもらいました。

そして尋ねたそうです。

「この店では客だけに掃除させるものなんですか?」

店長から返ってきた言葉は、

「本来なら、お怪我はないか、洋服が汚れていないかを確認するべきでした」

と話されたそうです。

友人は、

「だったら、なぜこのような対応なんですか?」

と尋ねた。

店長は、

「私の指導が行き届かなかったからです」

と話されたそうです。

友人は、店長の話は理解できたが、何かすっきりしないと話してました。

友人が店員に尋ねた事や食事途中で不愉快になり退店した事で、家族内で不穏な空気になり悪者のように扱われ、まだ注文して10分ぐらいしか経過していないのでお腹も空いている家族が終始不機嫌だったそうです。


私がこの話を聞いて考えたこと

ここからは、私自身の感想です。

友人は、飲食業に長く携わってきました。

飲食店を経営した経験もあります。

だからこそ、今回の出来事に強い違和感を持ったのでしょう。

もちろん、今の時代に依然と同じ接客を求めるべきだとは思いません。

飲食店を取り巻く環境も大きく変わりました。

以前からありましたが、人手不足。

人件費の上昇。

原材料費の高騰。

セルフオーダー。

セルフレジ。

配膳ロボット。

そして外国人スタッフの増加。

店舗によっては外国料理ではないのに日本人がいないところもいます。

飲食業界は、以前とは違う環境になっています。


ここは誤解してほしくありません。

外国人スタッフが増えたことを問題にしているわけではありません。

日本の飲食業界を支えている外国人スタッフはたくさんいます。

一生懸命働いている人もたくさんいます。

むしろ問題なのは、

国籍ではなく、教育とマネジメントではないでしょうか。

日本人でも、挨拶ができない。

お客様に気づかない。

厨房での私語が店内まで聞こえている。

お客様がいる前で、大きな声で雑談している。

そうした光景を見かけることが多々あります。

「これでいいのだろうか?」

と思うことがあります。

今回の店員も日本人だと話してました。


お客様は何も言わないから大丈夫?

ここも不思議なところです。

今の飲食店で少しサービスが悪くても、

「まあ、こんなものだろう」

「忙しいんだから仕方ない」

「安い店だから仕方ない」

と、多くのお客様は受け入れているのかもしれません。

わざわざ店員に言う人も少ないでしょう。

言ったところで面倒だから。

クレーマーだと思われたくないから。

何か言って「カスハラ」と言われるのも嫌だし。

せっかくの食事を嫌な雰囲気にしたくないから。

そう考えて黙っている人も多くいるでしょう。


なぜ友人は店長まで呼んだのか?

ここが今回の話で一番重要なところだと思います。

茶碗蒸し代を無料にして欲しかったわけではありません。

店員を困らせたかったわけでもありません。

友人自身も、

「自分たちが落としたことについては悪かった」

と話してます。

では、なぜそこまで言ったのか。

おそらく――

「客として、雑に扱われ嫌だった」

のではないでしょうか。


「お客様は神様」なんて言いたいわけではない

ここは非常に大切です。

お客様だから何を言ってもいい。

お客様だから店員が何でも言うことを聞く。

そんな話ではありません。

無理な要求をすることも、怒鳴ることも、人格を否定することも違います。

ただ、

「これはちょっと違うのでは?」

と伝えることまで、クレーマーなのでしょうか。

そうは思いません。


「お客様が来る」は当たり前ではない

飲食店を経営したことのある人なら、痛いほど分かることがあります。

お客様が来てくれなければ、売上はありません。

売上がなければ、従業員の給料も払えません。

家賃も払えません。

仕入れもできません。

それ故、

「ご来店頂きありがとうございます」

という素直な気持ちは、飲食業にとって非常に大切なものです。


もしかしたら、「期待しすぎ」なのかもしれない

ここで、ふと考えます。

以前の飲食店と今の飲食店を比べること自体が、もう時代遅れなのかもしれません。

今は、

「料理を提供する」

という部分が効率化されています。

注文はタッチパネル。

会計はセルフ。

配膳も機械。

人との接触を減らすことが、むしろサービスになっている店もあります。

そう考えれば、

「以前はこうだった」

と言い続けることにも意味がないのかもしれません。


それでも、なくしてはいけないものがあると思う

私は思います。

どれだけ効率化されても、

どれだけ人手不足になっても、

どれだけ外国人スタッフが増えても、

どれだけセルフサービスになっても、

「お客様を大切にする」

という気持ちだけは、なくしてはいけないのではないでしょうか。

料理を出す。

片付ける。

会計する。

それだけなら、機械でもできます。

でも、

「大丈夫ですか?」

「お怪我はありませんか?」

「こちらで片付けます」

「ご来店ありがとうございます」

という一言は、人間だからこそできるサービスです。

飲食店は単に食事を提供するだけではなく、総合的なサービス業です。美味しい食事をしてその時間だけでも幸福感を感じて頂きたいと考えるものです。


クレームを言う人は、本当に「面倒な客」なのか?

今回の話を聞いて、もう一つ考えました。

本当に店に興味がなければ、クレームなんて言わないのではないでしょうか。

「二度と行かなければいい」

それで終わります。

わざわざ時間を使って、

「こうした方がいいのでは?」

と言う必要もありません。

それでも何かを伝えるということは、

「本来はもっと良い店なのではないか」

という期待があるからかもしれません。

好きな店だから。

また行きたい店だから。

良い店であってほしいから。

だから言う。

何でもかんでも「カスハラ」と一括りにしてしまうのは、少し違うような気がします。

今後、サイレントクレームが一段と増える可能性があります。

それは改善の機会を失う為、経営者にとっては非常に危険な事です。


では、今回の出来事の答えは?

正直、分かりません。

友人も、今でも納得していない様子でした。

店や本社へ電話をしても、

「申し訳ありませんでした」

「店舗教育を徹底します」

と言われて終わるでしょう。

教育されたかどうかを、客が確認することもできません。

だからこそ、友人はその店から渡された本社の問い合わせ先を前にして、電話をするかどうか迷っていると話してました。全国チェーン店の1店舗が顧客の1意見をどこまで真摯に受け止めるかわかりませんから。


それでも、私は一つだけ願っています

飲食店には、効率化してほしい。

人手不足にも対応してほしい。

外国人スタッフも、もっと活躍してほしい。

セルフサービスも便利です。

安く食べられることもありがたい。

でも――

サービスにこだわる飲食店が、なくならないでほしい。

入店したら笑顔で「いらっしゃいませ」と言ってくれる。

帰るときには「ありがとうございました」と言ってくれる。

困っていたら声をかけてくれる。

何かトラブルが起きたら、まずお客様の立場で考えてくれる。

そんな当たり前のことを、大切にしている店。

私は、そんな店にこれからも残っていてほしいと思います。

これは個人店でなくても大手チェーン店でもできる事です。


「また、この店に来たい」

飲食店にとって、一番嬉しいのは、

「また来たい」

と思って頂ける事だと思います。

安いから来る。

近いから来る。

便利だから来る。

美味しいから来る。

それも大切です。

でも、

「この店が好きだから、また来たい」

と思ってもらえる店は強い。

そして、そういう店には、必ず「良いサービスを行う人」がいると思います。


今回の話を聞いて、私は改めて思いました。

飲食店は、料理だけを売っているのではない。

そこに過ごす時間も含めて、お客様に提供しているのではないでしょうか。

だからこそ――

「お客様がわざわざ足を運んでくれた」

という当たり前ではない事実を、飲食店で働く人には忘れないでほしい。

そして、サービスにこだわりを持つ店が、これから先も消えずに残ってほしいものです。

それが、今回の出来事を聞いた私の率直な感想です。

普通のお客さんが店へクレームを言うのは

・自尊心を傷つけられた

・もしくはその店が好き、ファンだからまた来たい

のどちらかが大きいと思います。

金銭目的等で言われるのは論外です。

クレームはお客様からの店への応援メッセージでもあり、ピンチをチャンスに変える機会でもあります。

そう思い、私も数え切れないクレームへ対応していました。

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