
◆名プレーヤーは名監督にあらず!
現場でよくある光景として「経験年数が長いアルバイト」をトレーナーに任命し、新人育成を一任するケースがあります。管理者としては「経験豊富だから大丈夫だろう」と安心してしまいがちですが、その判断が新人定着率を下げてしまう大きな要因になることは少なくありません。
プレイヤーとしては優秀でも指導者としては未熟な可能性があります。特に評価が高く、自分自身でも「できる奴」と自負しているトレナー程危険です。
王貞治やイチローは独特な打法で結果を出しましたが、同じ事を教えられてもできますか?
多くの人ができないでしょう。現に同じ打法で結果を出す人は増えてません。
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◆70点で十分!新人教育に必要なのは完璧さではなく成長の余白
初めて直ぐに満足の行く成果は経験者や天才以外はいません。
最初から完璧を求めている指導をトレナーがしているのならそれは間違えです。
指導する時間は限られてます。
100点を取ろうとすると本来初期の段階で身に付けて欲しい項目を見失います。
優先順位の高い事を一通りの流れで先ずは取得してもらえれば十分と考えるべきです。
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少々話はズレますが、感心した事があります。
トレナー育成の指導で東大生と某大学生と同時に行ったことがあります。
先ずは会社が用意した200ページぐらいある内容の濃い教本を渡し1時間、各自自習としました。
1時間後・・・。
やっていた事が全く違いました。
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東大生は一通り目を通して重要と思われるポイントを話してくれました。
一方、某大学生は最初の10ページぐらいについてある商品の説明を読み込んでましたと説明してくれました。
私が素直に感じたのは「東大に入る人ってやっぱりすごいなぁ~」です。
内容が濃い教本なので読み込んでしまうと某大学生のように先へ進めません。結果的に全体像が掴めませんし、恐らくこのやり方ですと途中で嫌になる可能性も十分あります。
それよりも全体像を掴んで重要な個所を抑えながら、徐々に深堀していった方が効率が良いです。
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何かを学ぶときも同じではないでしょうか。
最初から完璧を目指して初めてしまうと挫折するものです。
それよりも60点でも70点でも良いので先ずは全体像を掴み追々肉付けをすれば良いのです。
肉付けをする段階で、個々の個性が出てくるかと思いますが、土台を最初の段階で作っておけば大きくズレる心配もありません。
このような考えを各トレナーが理解し実行できる指導集団であれば新人育成は順調に行くものです。
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新人が続かない原因は「本人の問題」と片付けてませんか?
実は教育体制に問題がある事もあります。まずはその事実を直視する必要があります。
なぜトレーナー任せが危険なのか
◆経験=指導力ではない
名プレーヤーが必ずしも名監督になるとは限りません。経験豊富や優秀なプレイヤーであっても、人に教える力・論理的に説明する力が欠けている場合があります。
◆押し付け教育になりやすい
「自分のやり方が正しい」と思い込み、自分のコピーを作るように新人へ押し付けてしまう。結果、新人は「自分には向いていない」と感じて離れてしまいます。
◆新人教育は70点で十分
新人の段階では完璧を求める必要はありません。70点を取れれば上出来であり、そこから経験を積みながら加点していくのが自然な成長曲線です。ところが一部のトレーナーは「100点を取れ」と要求してしまい、結果的に新人の自信を奪ってしまいます。
ダメなトレーナー実例 & トレニーの声
① 自分のやり方だけを押し付ける
- トレーナーの行動
「俺がやってきた方法が正解だから、言われた通りにやれ」と指示。やり方の理由は説明せず、異なる方法を試そうとすると怒る。 - 新人の声
「なぜそのやり方なのか理解できないし、頭ごなしに否定されると自分で考える余地がない。間違えるのが怖くなって仕事が楽しくない。」
② 感情的に注意する
- トレーナーの行動
些細なミスでも「何回言ったら分かるの!」と感情的に叱責。冷静に説明する場を設けない。 - 新人の声
「怖くて質問できない。分からないまま作業するから余計にミスが増える。自分は向いてないのかなと落ち込む。」
③ 教える内容が場当たり的
- トレーナーの行動
「今日はこれをやってみて」と場当たり的に仕事を振るだけで、全体像を説明しない。順序や背景を伝えないので断片的な知識しか得られない。 - 新人の声
「自分が何のためにその作業をしているのか分からない。いつまで経っても全体像がつかめず、不安ばかり募る。」
④ ロジカルに説明できない
- トレーナーの行動
「とにかくこうしておけばいいんだよ」と根拠なく指導。理由を聞いても「昔からこうだから」で終わる。 - 新人の声
「納得感がなく、覚えたことを応用できない。違う状況に直面したら何もできない気がする。」
⑤ 放置型トレーナー
- トレーナーの行動
「見て覚えて」と言い残し、自分の作業に戻ってしまう。質問しても「忙しいから後で」と取り合わない。 - 新人の声
「質問できないまま一人で悩んでいる時間が長く、結局間違えてやり直しになる。相談できない職場なんだと思って辞めたくなる。」
管理者が取るべき行動
◆トレーナーの指導もヒアリングする
新人だけでなく、トレーナーの教え方や内容も確認してください。「どう指導しているか」を知らずに任せきりでは、間違ったやり方が放置されます。
◆トレーナーへの継続的な育成
新人教育は「トレーナーを育てる教育」から始まります。トレーナー研修や定期的な振り返りを行い、教え方の質を磨く場を設けましょう。
◆フォロー体制の二重化
新人への面談やフォローは管理者も必ず関わるべきです。トレーナーだけに任せるのではなく、管理者が「最後の受け皿」となることで新人は安心できます。
新人からトレナーの指導についてトレナーのいないところでヒアリングは絶対行うべきです。上から見たトレナーと指導された新人では感じ方が大きく違う場合があります。
めんどくさがって新人のヒアリングをしないで丸投げした結果、新人は大きなストレスを抱え退職も十分あり得ます。これはトレナーの指導の問題ではなく、実は経営者や現場責任者の課題ではないでしょうか。
新人が辞める、人が育たない・・・
これで困るのは経営者や現場責任者です。忙しかったり、めんどくさかったりしますが、結果的にご自身で首を絞めているようなものです。
まとめ
新人が定着しないのは「最近の若者は根性がないから」ではありません。教育の仕組みが「トレーナー丸投げ」になっていることが原因ではないでしょうか。
経験が長い=指導力がある、とは限りません。管理者が教育を「任せる」のではなく「共に作る」姿勢を持つことで、新人の定着率も現場の雰囲気も大きく変わります。
新人教育は トレーナー育成から始めること。これこそが現場を持続的に成長させる第一歩です。
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